【青森ワッツとB.革新#2】青森ワッツは青森の誇りになれるのか
青森県のプロバスケットボールチームの青森ワッツが2024-25シーズンでホームゲームに平均1,500人集めないと、2026から始まる新リーグで、現在の青森ワッツが所属するB2と同水準のB.ONEカテゴリに参入できないという記事を以前書きました。本記事を読む前に目を通してもらえると青森ワッツが置かれている状況が整理できます↓
今回の記事は青森ワッツの試合会場に足を運ぶことを改めて啓蒙するものです。まず、足を運んでもらいたい一番の理由「B.革新後最初のシーズンである2026からB.ONEに参入して欲しい」ということを強調して、後半では青森ワッツが青森に与える影響を考察します。まだ青森ワッツの試合を見たことがない方、行ったことがあるけど試合会場から足が遠のいている方でも興味関心を持てるように書くので最後まで読んでいただけると幸いです。
B.革新のおさらい
B.革新とはBリーグ(青森ワッツが所属している日本の男子プロバスケットボールリーグ)発足10年の節目の2026年に行うリーグ大改革の呼び名です。B.革新では現在のB1, B2, B3という3部制カテゴリの呼び名と所属するための基準が変わります。変更後の各カテゴリの呼び名と、条件は以下の通りです。各カテゴリの基準には入場者数と売上規模が求められ、チームの運営母体には一定の経営基盤が求められています。
- B1→B.LEAGUE PREMIER(B.PREMIER)~本気で世界の頂点へ~
- 入場者数:4,000名
- 売上基準:12億円
- アリーナ基準:5,000席など
- B2→B.LEAGUE ONE(B.ONE)~バスケを国民的スポーツへ~
- 入場者数:2,400名(仮入会条件1,500名)
- 売上基準:4億円
- アリーナ基準:3,000席など
- B3→B.LEAGUE NEXT(B.NEXT)~バスケを国民的スポーツへ~
- 売上基準:1億円
- アリーナ基準:3,000席など
青森ワッツは現在所属しているB2に相当するB.ONEの基準を満たせるかどうかという状況にいます。一番のハードルと思われるのが入場者数で仮入会条件のホームゲーム平均1,500名に対して2024-25シーズンは12月8日の鹿児島レブナイズ戦までで青森ワッツのホーム平均入場者数は1,358人という非常に厳しい状況です。
B.ONEに参入するとどうなるか
まず、B.革新の解像度を上げるために青森ワッツがB.ONEに参入すとどんな景色が見えるのかイメージしてみましょう。こちら2024年4月14日マエダアリーナで行われた青森ワッツ対バンビシャス奈良のハイライトです。
動画を見ると観客席に空きはほぼなく、青森ワッツのチームカラーの青が一面に広がっています。「ゴーゴーワッツ」の掛け声と、ゴールが決まったときの大声援からすごく熱を感じますね。このときの入場者数が2,844人です。B.ONEの入場者数の基準が2,400人なので、B.ONEに参入するとこのような試合がほぼ毎回行われることになります。(1,500名はあくまでもB.ONEの仮入会基準なので、1,500名をクリアしてもB.ONEに残るためには2,400名をホームゲームに集め続けることが必要です。)
青森でここまでの熱を生み出すイベントはねぶたなどの夏祭り以外に思い当たりません。Bリーグの試合は10月から翌年4月まで行われるので、夏祭りが終わり、内に秘める熱いものを解き放つ場を失った青森の方にBリーグの試合はちょうどいいのではないでしょうか?
とりあえずB.NEXTではダメ?
「青森ワッツ解散しないなら無理しないでB.NEXT(現B3相当)でもよくない?」という意見もあると思います。2024年春の青森ワッツ解散危機を目の当たりにした方からすると解散しないならB.NEXTにチームが残れるならいいという気持ちもあるでしょう。私もそう思っているところは少しあります。
さまざまな意見があるかと思いますが、やはり個人的にはB.革新最初のシーズン2026からB.ONEに参入して欲しいです。2026シーズンからB.ONEに参入して欲しい理由を2つ上げます。
Bリーグに追い風が吹いている今できないと将来的にも厳しい
1つ目の理由は「Bリーグに追い風が吹いているこのタイミングで基準を達成できないとこれからも達成できない」ということです。現在Bリーグには追い風が吹いています。きっかけはバスケ男子日本代表が2023年のワールドカップで48年ぶりに自力でオリンピック出場を決めたことでしょう。そして、2024年にはパリオリンピックで世界の強豪相手に堂々とした戦いぶりを見せて日本中を熱狂させたのはみなさんも記憶に新しいかと思います。こちらの動画は2023年ワールドカップの動画です。私もこれは本当に感動しました。
なお、動画の会場はB.PREMIER参入が決まっている琉球ゴールデンキングスのホームとなる沖縄アリーナです。B.PREMIERはこのような雰囲気でゲームが行われる凄い世界なんだなと思う一方で、青森ワッツのB.PREMIER参入はまだまだ現実味がない世界だなとも思います…
ワールドカップや2024パリオリンピックでバスケの注目度が上がったこともあり、Bリーグは毎年観客数を伸ばし続けています。また、B.革新を契機に全国各地でアリーナ建設の話題もニュースになっていますし確実に追い風が吹いている状態です。
この追い風状態の2024-25シーズンで青森ワッツがホームゲームに仮入会条件の1,500人も集められないようであれば、今後B.ONEの基準を満たすのは非常に厳しく長い年月が必要になるのかなと思います。何も知らない人からすると1,500人集められずにB.NEXT所属になることはカテゴリが降格したと認識され、離れていくブースター(Bリーグのファン)、スポンサーも出てくるからです。もう無いと信じたいですが、経営が立ち行かなくなる可能性も高くなると思います。
逆にこの追い風を味方にして2024-25シーズンでB.ONE仮入会基準のホームゲーム平均1,500人を達成することができれば、ブースターもスポンサーもさらに増えて、今は遠く思えるB.ONE基準のホームゲーム平均2,400人達成も早い段階で現実味を帯びてくるでしょう。しっかり集客してチームを運営していくという経営的視点から、2024-25シーズンでホームゲーム平均1,500人を達成することは非常にインパクトがあります。
選手によりいい環境で戦って欲しい
2026シーズンからB.ONEに参入して欲しい理由2つ目の選手にはよりいい環境で戦って欲しいというのが2つ目の理由です。
プロ選手であれば誰もがより高いレベルでプレイしたいと思っているはずです。B.NEXTよりはB.ONE、B.ONEよりはB.PREMIERへ、そしていずれは世界へと願っています。しかし、スポーツである以上高いレベルでパフォーマンスを出せる期間は限られていて、プロ選手は短い選手生命の中で結果を出すために毎日必死です。「一旦はB.NEXTでいいから地力をつけてからB.ONEへ」と言う選手はいないでしょう。選手目線で見ると2026シーズンにB.ONEに参入できないチームの魅力は確実に下がるはずです。
現在青森ワッツに在籍している選手は青森ワッツというチームやブースター、そして青森に少なからず愛着を持っていると思います。青森を盛り上げようと試合だけでなく学校での講演や地域貢献活動も頑張っているそんな選手たちにとって青森ワッツが魅力的なチームであり続けるためにも2026からB.ONE参入をして欲しいです。B.ONEに参入できれば練習環境や選手の年俸に回せる資金も増えてチームが強くなり、ブースターもより熱狂するといういいサイクルに乗れるでしょう。
Bリーグは青森に何をもたらすのか?
ここまでで青森ワッツが2026シーズンからB.ONEに参入すべき理由を説明しましたが、これだけでは青森ワッツに関心がない方が試合会場に足を運ぶ理由にはならないと思うので、ここからは青森ワッツがホームにしている青森という地域に何をもたらすのかについて説明し、青森ワッツに興味関心がない方にとってもプラスの影響があることを説明します。
Bリーグはバスケで地方創生を目指している
青森ワッツが所属するBリーグは「バスケで日本を元気にする」や「地域創生」というコンセプトを掲げていて、バスケで地方創生を目指しています。B.革新はこの目標を叶えるためのチャレンジでもあります。入場者数の基準を設けることでチーム運営会社の収益性を上げて地域を盛り上げていくことを目指していて、具体的には次のような効果があるでしょう。
- バスケを通じて出会った人同士による新たなコミュニティの形成
- 試合運営やバスケチーム経営による雇用の創出
- バスケチームの黒字による税収増加
- 他エリアからの観戦による経済効果
- 試合会場の飲食店や会場周辺店舗の売上増
- 単なるスポーツ施設でななく防災拠点ともなるアリーナの整備や維持管理
- プロスポーツチームだからこそできる地域貢献
経済効果の例として、青森ワッツの試合会場には毎回たくさんのキッチンカーや地元飲食店の出店がありますし、会場近隣のホテルでは宿泊客が増えるという話もあります。
Bリーグ所属チームの地域貢献の例をいくつか上げます。同じ東北でB1でも好成績を残している秋田ノーザンハピネッツは地域の課題解決に力を入れていて、こども食堂を運営しているのは珍しい取り組みだと思います。秋田ノーザンハピネッツの選手やスタッフも利用していて地域の方とのふれあいの場にもなっているようです。
B1の強豪千葉ジェッツはスポンサー、NPO法人、自治体と協力して「JETS ASSIST」という社会貢献プロジェクトを実施しています。具体的には「幼稚園・保育園にバスケットゴールを寄贈」「自宅の食品を支援が必要な方たちに届けるフードドライブの実施」などがあります。千葉ジェッツの集客力を社会貢献活動に上手く活用している事例がたくさんありました。
青森ワッツもバスケ教室や地域のイベント参加、学校での講演など様々な活動をしています。成長していくと規模の大きい地域貢献の事業ができるようになっていき、より地域に愛されるチームとなっていくでしょう。
青森ワッツは青森の誇りになる
試合会場での大迫力の声援や、2024年春の青森ワッツ解散危機に多くの支援があったことから青森ワッツはブースターにとって誇れるチームであることは間違いないでしょう。さらにブースターだけにとどまらず、青森ワッツがブースターではない青森に住む人にとっても誇れる存在になる可能性がB.ONE参入にはあると思っています。
自分の住んでいる地域や、出身地に誇れるものがあるのは嬉しいものです。そういったものが多いほど地域愛が強くなっていき、地域のために行動する人が増えて発展につながっていくでしょう。
青森が全国、世界に誇れるものだとりんごなどの農産物が思い浮かびます。自分が作ったものではないですが誇りに思っています。スポーツも同様に、甲子園で青森代表が活躍していたり、オリンピックで青森にゆかりのある人が活躍していると誇らしくなります。
青森ワッツも成長していくと世界で活躍する選手を輩出して、ブースター以外の方にとっても誇れる存在となるはずです。
すでに芽は出ていて青森ワッツバスケットボールスクールの1期生、駒沢颯(こまさわ はやて)選手は青森ワッツでプロバスケ選手キャリアをスタートし、現在B1で2026からB.PREMIER参入を目指している茨城ロボッツで活躍しています。
ふと見たニュースに取り上げられた日本人NBAプレーヤーが「青森ワッツ時代は雪道を走ってトレーニングしてました」とインタビューに答えているなんて未来もあるかもしれません。
残りのホームは19ゲーム
12/8(日)鹿児島レブナイズ戦は人口が少なく交通の便も悪いつがる市での開催にもかかわらず1,500人を超える人が観戦に訪れていて、ホームゲーム残り19で平均1,500人達成は決して無理な目標ではないと感じました。この日は私も会場で観戦したのですが、初めて青森ワッツを見た友人が「負けたけれども凄い面白かった!また来たい!」と言っていました。次のホームゲームは12/21(土)、22(日)に神戸ストークス戦が弘前市で行われます。青森ワッツのチケットが入手困難になる前にぜひ会場に足を運んでみることをおすすめします。
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